不登校生徒が13万人を越え、教育の危機学校崩壊が叫ばれる中で教育の原点をもう一度見つめ直そうというところから夜間中学の映画『こんばんは』の制作が始りました。

夜間中学にはさまざまな理由で義務教育を受けることが出来なかった人達がきています。年齢も15歳から91歳までさまざまです。そこでは効率優先や競争主義の教育は行われていません。
一人一人が必要とする勉強がそれぞれに合った方法で行われています。その中で生徒達は今まで読み書きが出来なかったり、学校に行くことが出来なかった苦難から解放され、生きる希望と自信を身につけて行きます。ここには「教えるとは希望を語ること 学ぶとは誠実を胸にきざむこと」という教育の原点が確実に息づいています。

閉塞し、荒廃が進む現代の中で、教師や親、生徒はもちろんのこと多くの人に観て戴きたいと思っています。


映画『こんばんは』 監督 森 康行

>>森康行(もりやすゆき)監督のプロフィール
1950年 静岡県掛川市出身。
1978年 短編の文化映画『下町の民家』(東京都の制作)で初監督。
以後、数多くの短編記録映画を生み出すと共に、テレビ・ドキュメンタリーの演出をてがけている。
1990年 被ばくの問題を現代の視点で考えようとする高校生を描いた 記録映画『ビキニの海は忘れない』
(90年/キネマ旬報文化映画第10位・日本映画ペンクラブ優秀作品・日本映画復興会議奨励賞)
1994年 土史をひも解く中で朝鮮人強制連行の足跡に出会う高校生が大きな歴史の流れを問い直す記録映画『渡り川』(94年/毎日映画コンクール『記録文化映画賞(長編)』・キネマ旬報文化映画第1位 )


見城慶和

私は夜間中学校教師生活42年間の中で、多くの人たちと出会ってきました。どの人も学ぶべき時に学べなかった重いドラマを抱えています。夜間中学の教室には、わが国の過去の過った歴史の被害者たち、現在の歪んだ社会や競争原理に支配された学校で痛めつけられた人たちなどが、「時代の生き証人」として座っているのです。そうした人たちの傷の痛みをすこしでも癒し、それぞれが自立してこの日本の社会で生きていくのに必要な基礎学力や知識をつけていくのが夜間中学の仕事です。「学びとは何か、学校はどうあるべきか」という問いかけへの確かな答えが、ここには息づいています。

 夜間中学にいると、170万人を超えるといわれている義務教育未修了者たちのうめき声が聞こえてきます。いま全国夜間中学校研究会では、こうした人たちの学びを保障するために日本弁護士連合会に人権救済の申し立てを行い、国に対して公立夜間中学の増設を強く求めています。教育の危機が叫ばれるこのとき、このドキュメンタリー映画『こんばんは』を世に問う意義は、はかり知れなく大きいものがあると確信しています。


>>見城慶和(けんじょうよしかず)先生のプロフィール
昭和12年生まれ。東京学芸大学卒。昭和42年から都内の公立中学校夜間部に勤務。 長年の実績が評価され、平成11年に*吉川英治文化 賞受賞。山田洋次監督の映画『学校』(第1作)のモデルの一人。平成15年定年退職後もなお、夜間中学生を中心にした学びの場「えんぴつの会」を運営している。 『こんばんは』の「夜間中学校の記録映画の製作を支える会」の世話人代表。
著書:『夜間中学校の青春』大月書房

*吉川英治文化賞=日本文化の向上につくし、讃えられるべき業績をあげながらも、報われることの少ない人、あるいは団体に贈呈される。